映画「ゴジラ-1.0」感想。大満足の大作だが「怪獣映画」ではなく「人間ドラマ」
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ゴジラ70周年記念作品「ゴジラ-1.0」が遂に公開されました!
邦画のゴジラは2016年「シン・ゴジラ」以来なんと7年ぶり。前作の興行は大変好調だったので、この勢いで邦画のゴジラがまた復活すると思っていたのですが、結構掛かりましたね。なまじ前作が大ヒットしたせいか、おいそれと新作が作られない状態だったのかもしれません。
そんな待ちに待ったゴジラ新作。昨日公開初日に見て来ました!是非とも映画館で観て欲しい作品だったので内容には極力触れず、ざっくりとした概要に絞って感想をまとめます。それでも若干ネタバレありなので注意です。
追記:公開から1ヶ月以上経過したため、一部軽くネタバレも交えてリライトしました。
CG・VFXのクオリティには大満足。もうハリウッド版ゴジラにも引けを取らない
まず物語の感想の前に、VFXの評価から。
僕が今作を観て一番感動したのはゴジラの迫力。邦画ゴジラもCG・VFXのクオリティが遂にハリウッド版に引けを取らない域まで来たと感じました。
ゴジラ映画が大好きな僕ですが、唯一苦手だったのがCGを使ったシーンの描写力。平成モスラ三部作やミレニアムシリーズ以降、ゴジラ映画にも積極的にCGが投入されましたが、正直満足出来るものではありませんでした。
映画の世界にのめり込んでいる最中、突如いかにもな”ツクリモノ”が堂々と画面を占拠する悲しさ。大ヒットした前作シン・ゴジラもファーストコンタクトであの尻尾が登場したシーンは本当に辛かったです。ファイナルウォーズから何年もゴジラの復活を待ち続け、ようやく念願叶い最高の期待と共に再会したゴジラは、一目で合成とわかる簡易な質感。「あぁ。やっぱり日本のゴジラで出来るVFXはここまでなのかな」と諦めのような気持ちになったのを覚えています(その後、第4形態で盛り返しましたが)。
それが今作は最初から最後まで一切違和感が無く、映画の世界に没入する事が出来ました。ゴジラの質感も、動きも、崩壊する建物も現実(リアル)そのもの。
遂に日本のゴジラでも、堂々たるクオリティのVFXが完成し感無量です。25年前。初のハリウッド版「GODZILLA」の圧倒的な描写力の差に衝撃を受けてからここまで本当に長かった。
24年3月追記:祝!第96回アカデミー賞 視覚効果部門受賞!!引けを取らないどころか最高の栄誉を勝ち取りました!凄すぎる!!
この映画は「怪獣映画」では無く、あくまで神木隆之介君の「人間ドラマ」である
さて本題に入ります。
今作は「ゴジラ映画として観たか」が評価の分かれ目になると感じました。
ゴジラ映画とは何か。あくまでVSシリーズ世代の僕の考えですが、怪獣パート・人類パートのバランスを取りつつも、あくまで主軸は怪獣の特撮パートであり、スクリーンのメインはゴジラ(怪獣)のバトルが占めている映画の事です。
一方でこの映画は間違いなく神木隆之介君が演じる「敷島の物語」で、全編に渡って敷島の葛藤・苦悩。そして克服を映画の軸にしています。ゴジラは敷島に対する舞台装置のような役割を担うため、登場は要所要所に限られ、役目が終わる度にスクリーンから姿を消します。
通常のゴジラ映画ならば中盤あたりに再上陸して、後はひたすら暴れっぱなし。後半は怒涛のバトルパートの連続となりますが、今作のスクリーンを占めているのはゴジラより敷島。さらに最後のバトルパートもゴジラはほとんど海に潜っており姿が全然見えない!
その点がゴジラ映画として観に来た人には物足りなさを。一方でゴジラを観た事が無い人には、人間ドラマの大作として評価が別れていると思います。
「VFXは最高だけど特撮映画としては物足りない。でもシンプルに神木君の人間ドラマとして見れば傑作」というのが感想です。
途中から先の先まで読める展開の連続なのは残念
ここからは人間ドラマとしての感想ですが、敷島の物語という単純明快なストーリーであるが故、話が散らかる事も無く進んでいく本編はとても鑑賞し易い。
今作は終戦間もない武装解除された日本が舞台。その時代特有の設定を利用した「もしもあの時代にゴジラが現れたら」という「歴史のif」が随所にある点は大変面白かったです。
個人的にはシンガポールで処分予定の「重巡洋艦 高雄」を、ゴジラ討伐のため日本に呼び戻すという設定は拍手喝采でしたw どうせなら妙高も出して欲しかったですけどね。
他にも「局地戦闘機 震電」や「駆逐艦 雪風」等、歴史のミリタリー好きにはたまらない要素が登場します。ゴジラと夢のコラボですよ。
しかしストーリーの展開に関しては、もう少し尖った展開があっても良かったのかなと。
本編の大筋の流れはトラウマ克服・一致団結系の教科書通りといった感じ。中盤以降は展開の2手先、3手先、そしてゴジラファンなら尚更クライマックスのシーンまで読めてしまう。これからどうなるんだろう…が無く「こうなるだろう」という予想通りにポンポン進んでいくのは残念な点でした。
演技力ではなく演出の問題?爪痕が残せそうで残せない
そして役者の演技について。
主役である神木君の繊細な演技力は、ただただ感嘆するばかり。ここまで感情の揺らぎ・動揺を自然に演じられる役者を他に知りません。
しかしそういった細かい演出では無く、この映画で最も強く印象に残ったシーンは?と聞かれると応えに中々窮します。全体を通して質が高い作品である一方、10年後、20年後に「ゴジラマイナスワンと言えば?」という強烈なシーンは何処だろうか。
一番のピークは銀座で敷島が絶叫するシーンだと思いますが、一呼吸置いてからまた絶叫したせいで一気にセリフっぽくなっちゃいました。ゴジラマイナスワンを象徴するシーンになり得たのに、あの演出は本当に惜しい。それまでずっと自然に感じられた神木君の演技に、ここだけは違和感を持ってしまいました。演技の問題ではなく台本・演出の方向性だと思いますが。
あそこで叫び続けるなら、もういっそ「ゴジラアアアアアァァァァ!!!!!!!」みたいなセリフに振り切って良かったと個人的には思います。これだけでミレゴジは今も語り継がれているんですよ。阿部寛は凄い。
まとめ。”ゴジラ映画”としては物足りなさを感じつつも、初心者には自信を持ってオススメ出来る大作
以上。ゴジラ-1.0を観た僕の感想でした。
色々と重箱の隅はつつきましたが、ゴジラの造形はメチャクチャ格好良いし、CG・VFXも歴代最高のクオリティ。ストーリーも明快で最後は大団円。ゴジラ初心者に自信を持ってオススメ出来る映画です。僕もゴジラファンとして、個人的には「シン・ゴジラ」よりも好きかもしれない。
ただゴジラ映画の矜持として特撮パートはもっと充実させて欲しかったのは正直な感想です。
人間ドラマを主軸にするにしろ、せめて最終決戦はもうちょっと盛り上げてほしかったですね。ゴジラが海中にいてほとんど見えませんでしたから。