ドラえもんの声優、大山のぶ代さんが9月29日に老衰のため亡くなっていたことが報道されました。
【訃報】ドラえもんを演じた声優・大山のぶ代さん(90)老衰で死去 所属事務所発表(テレビ朝日系(ANN)) – Yahoo!ニュース
2015年に夫の砂川啓介さんが大山さんの認知症を公表し、老老介護の状態にあるとして当時大きな話題になりましたよね。
それから数年後、砂川さんが亡くなり、一人残された大山さんの状況が心配されていましたが、遂にという感じ。今年の7月には、のび太役の小原乃梨子さんも亡くなってしまい、まるで後を追うかのようでした。
これで、僕が子どもの頃に見ていた「ドラえもん」の主役5人の中で、存命の声優はしずかちゃん役の野村道子さんだけになってしまいました。時の流れを感じずにはいられない。
つい先日、なんとなくの気まぐれで「ドラえもんプラス」を読み直し、その流れで夜には妻と一緒にAmazonプライムで、懐かしいドラえもんの映画
を二人で観たばかりでした。「やっぱりドラえもんは、この声じゃなきゃね」なんて冗談めいて話した直後だけにショックは大きい。虫の知らせだったのだろうか。
「のぶドラ」で育った少年期
僕は完全に「のぶドラ」世代。子供の頃から大山のぶ代さんのドラえもんと共に育ちました。いつもドラえもんの玩具に囲まれ、ドラえもんと一緒に過ごしてきた。アニメが始まる時間になると、親に「寝る時間だよ」と強制的に寝室に連れて行かれても、どうしてもドラえもんが見たくて仕方がなかった。結果、子どもながらに考え、父親の晩酌が始まると、放置されるテレビのチャンネルをこっそりテレ朝に合わせおき、寝室の襖からそっと覗いてドラえもんを観るのが、僕の日常でした。
毎年の大長編映画も楽しみだったし、VHSテープも擦り切れるまで繰り返し観ました。もはや「のぶドラ」は、僕の幼年期から少年、そして青年期までを共に過ごした、かけがえのない家族の一員でした。それだけに、あの歴史的な全キャストの声優交代の際は、戸惑いを感じたのを今でも覚えています。
今なら事情は理解できるが
今振り返れば、裏ではいろいろな事情があったと理解できますが、当時は国民的アニメキャラクターの唐突な一斉交代劇に心底驚きました。率直な感情としては、キャラクターの「魂」と言える声が突然全て変わってしまい、過去の映画も新キャストで続々とリメイクされるのを見て、まるで自分の思い出が塗りつぶされていくように感じました。それだけ「のぶドラ」の存在は、僕たちの世代にとって大きかったです。
今では完全に世代交代が済み、「ドラえもんを描いて!」と頼んでくる従兄弟の娘や、会社の若い子たちは「のぶドラ」を知りません。僕も「わさドラ」を受け入れ、新作の劇場版を観ても、さすがにもう違和感は感じなくなっています。慣れたものです。
それでも、昔の映像がふと流れたり、ドラえもんのグッズを目にすると、最初に頭の中で流れてくるのは、やはりあの優しい「のぶドラ」の声。あの声と一緒に過ごした記憶と共に、一生忘れることはないでしょう。
ありがとう、大山のぶ代さん。
そして、「ペコを一人にして先には逝けない」と強い決意で自宅介護を続けていた砂川啓介さん。志半ばで先に逝かれましたが、今頃お二人はまた一緒になれたのではないでしょうか。どうか安らかにお眠りください。